実は自分は恥ずかしいくらい、オーセンティックなハードロックに関しては解っていない方です・・・。
ハードロックを歌い始めた頃、周りに勧めてもらったり、自分の好きなミュージシャンがルーツと語っている人を聴いてみたりで・・・。まだまだ勉強中ですが、やはり感性の柔軟なころに聴いていたものは自分の中でも非常に影響力が大きかったり、吸収の度合いもハンパじゃなかった気がします。
UFOの”MISDEMEANOR”というアルバムも、初めてハードロックのコピーを歌ったバンドのギターの方が、これええで、と聴かせてくれたものでした。
一般にはやはりUFOといえばマイケル・シェンカー時代の方が有名ですし、UFOにぞっこんのファンの方からしたら、このアルバムは異色すぎて賛否が別れたのでは、と思います。ただ自分はUFOそのものに全く予備知識が無かったので、白紙の状態で聴くことができました。
ライナーノーツから引用させて頂くと、”Headstone”という2枚組のアルバムを出した後、スキャンダルにまみれていったん空中分解したUFOが、フィル・モグ以外のメンバーを一新して1985年に発表したアルバムがこの”MISDEMEANOR(ミスディミナー)”だそうです。
フィルがLAで新生UFOのメンバーを探していたとき、当時頭角をあらわしていた2人のギタリストのデモテープが届き(一人はアルカトラス加入を決めていた頃のイングヴェイ・J・マルムスティーン、もう一人はサンフランシスコで注目されていたアトミック・トミー・M )フィルはアトミック・トミー・Mに接触、トミーが曲作りを開始したという経過だったそうです。
それまで、シンセ・サウンドを効果的に配したハードロックをちゃんと聴いたことがなかった私は、どえらい衝撃をうけました。まず曲がカッコよかったのです。アトミック・トミー・Mは凄腕のギタリストで、随所で凄まじいテクニックが光るにも関わらず、けっしてそれをひけらかすのでなく、フィルの声質と歌い方を生かした曲調のなかで、ときにはシンセに主役を譲り、一歩ひくこともできるような、楽曲重視のミュージシャンでした。(このあたりは、当バンドのギター担当の仲誠司氏と共通しているかもしれません。)
もちろん当時はそこまで分析できるわけでもなく、ただ「かっこええ~!」だけで聴いていました。(汗)
全体を貫いているのは、「透明感」でしょうか。どこか哀愁を感じさせるフィル・モグのヴォーカルに、ポール・レイモンドの繊細なキーボードアレンジが色彩を添え、アトミック・トミー・Mのスリリングでエモーショナルなギターがさらに曲を叙情的にドラマティックに盛り上げる、という感じ。
現在は完全なペーパードライバーの自分ですが、当時は命知らずにもよく車を運転しスタジオにいったりライヴで機材を運ぶ手伝いなどしていましたが、夜、一人で運転しているとき、なぜかいつもこのアルバムばかり聴いていました。そんなシチュエーションがぴったりくるような、不思議な魅力をもったアルバムでした。
特に、7曲目に収録されている”Blue (2009 Remastered Version)“は、こんな美しいイントロを持った曲にはなかなか出会えないのではないか、と何回聴いても思ってしまう位素晴らしいアレンジと情景描写にたけた曲で、ほんとうに大好きです。
最近はめったに音楽雑誌も開かず、新譜もチェックしていませんので、現在も彼らが活動されているのかなど全く把握しておらずお恥ずかしい限りですが、お気に入りのアルバムをあげよといわれたら間違いなく上位に入るアルバムです。今聴いても、不思議とあまり時代を感じさせない、普遍の魅力をもっているような、そんな気がします。
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