阿修羅のジュエリー (よりみちパン!セ)

阿修羅のジュエリー

いちばん好きな仏像は?という問いに、奈良興福寺の阿修羅像、と答える方は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。

かくいう私も、阿修羅像ファンの一人です。幸い大阪から奈良は比較的近いので、ときおり思い立って、興福寺まで出かけてしばらく阿修羅像の前に佇んだりしておりました。

怒り、嘆き、絶望…そんなやり場のない感情をすべて抱きかかえ、昇華させ、苦悩しながらもすっと顔をあげ、凛としたくもりのない瞳で世界を見つめている…その清々しいお姿が、見つめるこちらの心まで鎮めてくれはるのです。

この本は偶然書店で手にとって、その大変面白いテーマに興味をそそられ購入致しました。著者の鶴岡真弓さんは、日本におけるケルト文化研究の先駆けでもある装飾文明史家です。

ページをめくると、シルクロードの端から端、極東のジパングから西のローマ帝国まで、ジュエリーの歴史をひもとく旅が始まります。そして極東のジュエリーの出発点は、阿修羅像の身につけていた装飾品なのです。

人間にとって、ジュエリーとはどういう意味をもち、どんな願いが込められてきたものなのか?仏教美術から、ルネサンス絵画まで、ジュエリーに着目し新たな意識で観賞すると、こんなに新しい発見があるのですね。

単に、身体を飾る事、所有財産としての価値だけが目的ではなかった、ジュエリーのミステリアスな魅力と歴史の素晴らしさに感動致しました。

鶴岡真弓さんの他の著書も、ぜひ読んでみたいと思います。 また、阿修羅像に会いに行きたくなったなぁ…。

 

 

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