昨年10月に訪れた展覧会の備忘録で申し訳ありません。

昨年夏~秋にかけて、公私ともに気落ちすることが多くこちらのブログもほとんど更新することができませんでした。今年になり、本当に久しぶりに再会できた恩人の方や、心配して誘い出してくれはった友人の方々より「しっかりせぇや!」と激励のお言葉を頂いて、たいへん勇気づけられました。ほんまにおおきにでした。こんな自分ですが、気にかけて下さる優しい方々への感謝を忘れずに、はりきっていかねばならないなぁと思います…!

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以前、グスタフ・クリムトやギュスターブ・モローなどの世紀末芸術に魅かれているとご紹介致しましたが、バーン・ジョーンズについてはあまり知らなかったのです。バーン・ジョーンズが、「ラファエル前派」と呼ばれるイギリスの19世紀末の芸術家たちの集団…(初期ルネサンスのように自然の中に美しさを見出す一派)…の流れを継ぐことは、徳島の大塚国際美術館の展示で初めて知りました。

明治時代の文豪・夏目漱石や、画家の青木繁にも影響を与えていた事、アール・ヌーヴォーの旗手であるウィリアム・モリスと親友で、美しい装丁の書物の出版に一緒に取り組んだ事も特集番組等で知り、これは観に行かねば、と昨年10月兵庫県立美術館に足を運びました。

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ラファエル前派の流れをつぐバーン・ジョーンズの絵は、ウィーンの強烈な世紀末芸術と比べると、同じ幻想的な表現でもどちらかというと清楚かつ可憐…抒情的と感じました。しかし、印象は負けず劣らず強烈でした。何というか…理想の美への追求を、とことんまで突き詰めていく迫力とでもいいましょうか…。

ヴィクトリア朝の優雅さをリアルタイムに反映している魅力もさることながら、構図、色調、自然の造形や人物のフォルム、表情すべてが一体となって、完璧に磨き上げられた宝石のような輝きを放っているのです。

「ピグマリオンと彫像」の連作では、自分の作った彫像に恋してしまい、彫像に命が与えられて歓喜する青年が描かれていましたが、これこそバーン・ジョーンズの理想だったのでしょうか。

冷たいほどの高貴さを持った、この世のものらしからぬ、女神のような美しさ。ぞくぞくするような神秘的な美が、そこにはありました。

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併設で、「パール~海の宝石展~」も行われていました。

パールを用いた有史以来の貴重な装飾品の数々が、鍵の付いた頑健で豪華なアンティークのケースに護られ展示されておりました。

ヨーロッパの王侯貴族や、有名なセレブのまとったアクセサリーも素敵でしたが、一番感激したのは、オリエントの古代の楽器である琵琶に螺鈿(らでん…真珠質~マザーオブパールの装飾)を施し、他の宝石も散りばめて豪華に再現したものでした…!(モデルは正倉院蔵の「螺鈿紫檀五弦琵琶」です。)天女が演奏するとしたらこんな楽器かも知れないと、あまりの美しさに見とれ息をのむほどでした。

天然真珠の採集の時代から、養殖真珠が登場し、宝飾品としてどのように扱われてきたか等の歴史をVTRで上映しており、大変興味深く勉強になりました。また、最近は安価で品質の劣悪な真珠が流通するようになり、真珠自体の宝石としての価値を下げる事態も招いているそうです…。良質の真珠を頑張って生産しておられる生産者の方は、さぞかし歯がゆいことでしょう。

高価なものだけに、自分がホイホイ入手できるジュエリーではないのですが…その歴史や、本物のもつ輝きを知るってことは、装飾の文化に親しむという観点で大切で意味深いことやったなぁと実感いたしました…。

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図録を購入して参りませんでしたので、頼りない備忘録となり恐縮です。

バーン・ジョーンズについては、言葉では感動が表現しきれず…つたないオマージュを尊敬の念で捧げることができたら…小さな野望ではありますが…