職場へ向かう途中の、喧騒のはげしい通路の広告灯の上のわずかなスペースに、毎年、燕が渡ってきて、巣をつくり、雛を育てていたのです。

夕方以降も終電まで明々と電灯はついているし、鳥的につらくないのかなぁと思うのですが、近辺は駅前でカラスなどの天敵も多く、その場所が安心して住めると判断したのかも知れません。

今の職場に変わり、その場所を通勤で通るようになってから毎年元気に渡ってきてくれていたのですが、昨年の夏巣を残したまま、雛が巣立った形跡もなく、途中で姿を消してしまったのです。

天敵に襲われたのかなぁ、とか、雛が病気になって、しかたなく親鳥だけ渡っていってしまったのかなぁと、なんだか心配でした。

通勤の人々の行きかう往来にも関わらず、建物の管理者の方も寛大で、主のいなくなってしまった巣を掃除して撤去してしまわずそのまま一年保管しておいてくれたのです。(昨年までも、燕がやってくると、巣の下にパイロンを置いて、「燕子育て中につき、頭上ご注意下さい。」と注意書きを貼って、暖かく見守って下さっていました。忙しく職場に向かう人たちも、少し振り返って燕たちの様子を確認したりしておられました。)

もう今年は会えないのかなぁと思っておりましたが、チチッという可愛い鳴き声とともに、高架下の巣に向かって、通勤客の頭上をかすめ、戦闘機みたいに踵を返しながらすばしこい飛翔でやってくる親鳥に会うことができました。

寝坊して結構ぎりぎりに家を出たにも関わらず、しばらく足を止めて、また会えたことが嬉しくて見入ってしまいました。

今年は、ぜひ元気に雛たちを連れて渡っていって欲しいと願わずにはいられなかったです。